根管治療
根管治療について
根管治療を行うことで得る最も大きなメリットは、重度のむし歯でもご自身の歯を残すことが可能になることです。細菌を可能な限り減少させ、残った細菌が活動できないように根管充填で埋葬させることで、重度のむし歯が再発するリスクを限りなく下げることができます。
根管治療後にむし歯の再感染が起こり、歯の中だけでなく歯を支える顎の骨に膿が溜まってしまうと、今度こそ抜歯をしなければならない可能性が非常に高くなるため、最後の治療と考えています。
根管治療はビルで例えると、一番重要な基礎工事にあたります。どんなに綺麗な歯をいれても基礎工事がきちんとできていなければ、将来痛みや再発を起こし、やり直しになってしまいます。
長く安定した歯の状態を保つために、根管治療はとても重要な治療だと私は考えています。
歯の神経がない状態でも
痛みを感じる理由
歯周組織を通る神経が、炎症などを刺激として知覚してしまうためです。歯肉の腫れを伴うことも少なくありません。神経の無い歯は免疫力がなくなっているため、細菌感染しやすく、重度のむし歯の再感染が起こった場合、歯の根管内部だけでなく歯を支える顎の骨に膿が溜まり、夜眠れないほどの激痛が起きることもあります。
重度のむし歯以外に以下4つが
考えられます
- 歯が割れている
- 根管治療が不十分
- 歯周病が進行
- 噛み合わせが合っていない
歯の亀裂や割れた部分に沿って細菌が侵入し、根の先で炎症を起こします。神経のない歯は歯質がもろくなっているため、割れるリスクが高くなり、寿命が短くなります。
根管治療における感染部位の除去、洗浄・消毒が不十分であったり、根管充填などで封鎖しきれていなかったことで、根管内で再び細菌が増殖し、根の先で炎症を起こします。
重度の歯周病になると、歯周組織が壊滅的に破壊されてしまい、歯周ポケットの奥深くで炎症が広がり、痛みを伴うことがあります。
噛み合わせによって集中して力が加わることで、歯周組織に炎症が起こります。
根管治療の種類
根管治療(歯内療法)は大まかにいうと、歯の中にある歯髄という組織に病気が生じた際に行う歯科治療の一つで大きく分けると以下の通りになります。
歯の神経が残っている場合の治療方法
生活歯髄療法
健康な歯髄(神経)を可能な限り温存する治療初回根管治療
初めて歯髄(神経)を取り除く処置(抜髄処置)歯の神経が残っていない場合の治療方法
初回根管治療
初めて感染した歯髄を除去する処置(感染根管処置)
再根管治療
過去に行った根管治療をやり直す処置
きちんと根管治療をしなかった場合の例
日本における保険診療(旧来型の治療法)の成功率は30~50%と言われています。
このため根管治療時の感染のコントロールが不十分なことが原因で治っていないケースが結構あります。そのような場合は根管治療で残すことが出来るということです。
しかし、根管治療を繰り返すことで成功率は下がるだけでなく、毎回削ることになるので残る歯の量も減ってゆきます。そのため、最初の時点で出来るだけ「上質な根管治療」を受けることが、長期間の安定につながり、歯を抜かなくてすむ可能性が高くなります。
抜歯しなければならないケース
- 歯の根の破折が深部まで及んでいる
- むし歯が非常に深くまで進行している
- 根管治療以外の問題(歯周病の合併など)がある
根管治療の処置中に痛みを
感じることはありますか?
治療中
当院では、必ず麻酔をしてから治療を行いますので、治療中の痛みはほとんどありませんが、ごく稀に麻酔が効かない体質の方は痛みを感じる場合があります。
治療後
根管治療の目的の一つに、炎症や痛みを取り除くことがあります。治療後の数日間は過敏になり、痛みのような違和感や刺激に反応してしまう場合もありますが、いずれも数日内に治まるケースがほとんどです。
また、感染が根管内から根の周りに広がったことが原因で痛みが出ている場合、根管治療だけでは感染を取り除くことが難しいため、抗菌薬を飲んでいただきます。その場合は薬が効くまで2~3日かかりますので、その間は痛みが続きます。
これらの症状は鎮痛薬で対応します。
麻酔自体の痛みを減らす対策をしています。
根管治療のおおよその治療期間
治療期間
根管治療は特別な問題がない限り、2~3回の通院で終わります。1回あたりの治療時間は、60~90分となります。
ただし、1本の歯の根管治療単独の治療というケースはほぼありません。その後に土台や補綴などが必要な場合が多く、2ヶ月程度が目安となります。また、歯周病やむし歯が併発していることが多く、かみ合わせを含めて総合的に治療してゆくことになります。
定期的に通院することで、治療後の経過を追うことができます。根のまわりにできた病変の縮小、吸収した骨の回復状況、かみ合わせの状態、をチェックすることができるだけでなく、メインテナンスで通院することで再発の予防につながります。
根管治療は医院により治療内容・診断が違う為、こんな歯科医院での治療をおすすめします。
多くの歯科医院で、ラバーダムを使わずに、薬で治そうとしているという現実があります。
そのような歯科医院で受けている根管治療がなかなかうまく行かず、何ヶ月もの長期間にわたって、痛みや違和感が残っているために抜歯との診断を受けることがあります。
しかし、感染のコントロールをきちんとしていない状況で強い薬を過度に使って、生体組織をかえって痛めつけてしまうことが多く、また細菌の感染を残したままになっている可能性が非常に高いのです。
根の病気の原因は、単純に「細菌」の感染です。
根管治療の成功率が高い歯科医院は、「無菌的な口内環境」をつくり、細菌を「排除すること」、細菌を「侵入させないこと」に最善を尽くしているのです。
- ラバーダム防湿を毎回行っている
歯科医院を受診する 根管治療の基本は、根管内の感染の除去です。
感染源はお口の中に存在している細菌ですから、根管治療中に細菌を持ち込まないように防御することが最も重要で、世界標準です。
そのため「ラバーダム防湿」はマナーです。
ラバーダムをせずに治療のたびに唾液やプラーク(細菌)の根管内への侵入を許し感染を起こし、それを薬で消毒するというのは本末転倒です。 - マイクロスコープ(顕微鏡)を
使用している マイクロスコープは非常に有効な器具ですが、ラバーダム防湿で感染のコントロールがきちんとできなければ治すことは出来ません。
マイクロスコープ下では感染部分と健康部分がはっきりと区別でき、通常では見逃してしまう歯質のクラック(亀裂)、細い根管の探知などに必須です。また、根管内部かなり先端まで見ることが可能なため、問題の原因をかなり正確に診断することが可能です。 - 歯科用CTがあるマイクロスコープ同様、CTがあるからといって治るわけではありません。しかし、3次元的に立体的に歯を診ることが可能なため、問題の原因の特定・診断に非常に役立つのが歯科用CTです。
- 毎回洗浄・消毒・滅菌した治療器具を使用している治療に使う器具が細菌に汚染されていると、歯根内に細菌を入れてしまうことにつながり、さらなる感染を引き起こします。
根管治療を行う以前に、
抜歯をお勧めするケース
歯の根の破折が深部まで及んでいるケース
歯が根を分けるように縦に折れてしまっていて、破折ラインに沿って感染が広がり、感染の除去が不可能なだけでなく、歯は噛むためのものですので、何十キロという咬合力がかかればさらなる悪化を止めることはできません。
感染が広がり周囲の歯に悪影響を与えてしまうため、その後の予後を考慮して抜歯をお勧めします。
むし歯が非常に深くまで進行している
むし歯が歯肉の中、骨の中にまで進行している場合も、根管治療以外にあらゆる手を尽くして歯の保存に努めますが、むし歯を除去したら健康な歯質の量が非常に少なくなるという場合、その後の予後を考慮して抜歯をお勧めします。
根管治療以外の問題(歯周病の合併など)がある
同時に歯周病による破壊が根の先端まで広がっている場合、根管治療だけでなく歯周病治療が必要ですが、その後の予後を考慮して多くの場合、抜歯をお勧めすることになります。
他院で「抜歯」と診断された場合でも、歯を残せる可能性があります。
他院で「抜歯」と言われても、適切に治療を行えば歯を残すことが可能な場合があります。
根管治療時、ラバーダム防湿などの基本的な感染のコントロールが不十分なことが原因で治っていない場合があり、そのような場合は根管治療で残すことが出来る可能性があります。
また最近では、インプラント治療が普及していることもあり、早期の段階で抜歯、そしてインプラント治療となる場合もあると思います。しかし、ご自身の天然歯よりまさる人工物は存在しません。極力残して治療することが大切だと当院では考えています。
他院で「抜歯」と診断されてしまい、
治療内容に悩んでいる・困っている患者さんへ
何とか抜かずに済まないかと悩んでおられると想像します。
医療に絶対はないので、必ず残せるとは断言できませんが、根管治療において何が一番大切なのか、治療の基本を丁寧に行えば残せる可能性があります。
どうかそのような基本に忠実な治療をしていただける先生を探してください。一人でも多くのかたが、ラバーダムをして安全な根管治療が受けられるようになることを願っています。
他院のやり直し治療は
一回目の根管治療が重要です
世界的に、5年後や10年後も歯を健康的に使えている状態、つまり根管治療の成功率はさまざま研究で50~90%と報告されています。
一方、日本における保険診療(旧来型の治療法)の成功率は30~50%といわれ、多くの歯が抜歯に至ることになります。
しかし、根管治療を繰り返すことで成功率は下がるだけでなく、毎回削ることになるので残る歯の量も減ってゆきます。そのため、最初の時点で出来るだけ「上質な根管治療」を受けることが、長期間の安定につながり、歯を抜かなくてすむ可能性が高くなります。
マイクロスコープを用いた
根管治療について
マイクロスコープとは何ですか?
簡単に言うと顕微鏡です。歯科用顕微鏡は患部を最大20倍強に拡大することで、肉眼とは比較にならない量の情報を手に入れることができます。拡大することでえられるメリットははかりしれません。
マイクロスコープは、1900年代頃から脳外科、眼科領域への導入に始まり、徐々に歯科治療に応用され始めました。
マイクロスコープがない場合、見える範囲の治療以外は、勘に頼る部分が多くなります。むし歯を大きく削り過ぎたり、逆に、感染部分を残してしまうことが起こることになります。
つまり、見えるか、見えないかは全ての治療の精度に大きく影響することになります。
根管治療にマイクロスコープを
使用した根管治療の特徴
マイクロスコープを使用することで小さな歯の根の中に光を通すことができ、さらに20倍以上の拡大した視野の中で歯の中の状況を手に取るように把握し、直接治療を行うことができます。肉眼での治療に比べればその精密さは歴然です。おおげさですが、たった小指の先ほどしかないサイズの歯1本がサッカーコート一面くらいの広さに感じます。
従来は全く見ることのできなかった、「根の先の管の中」「感染物質の取りのこし」「腐ってしまった神経の残がい」「隠れた根の管」を見つけることができます。
マイクロスコープの登場は、鮮明な画像、光を届かせる技術など、根管治療を大きく変え、いまや世界的に必須となっています。
CBCTでさらに詳細な情報を
入手することが可能
2次元の世界だった通常のレントゲンとは違って、CTは必要な領域を3次元的にあらゆる方向から検査・診断することが可能です。
「問題がある部分の特定」「治療する歯の周りの骨の状態」「治療している歯に残っている感染物質」など判断しづらかった多くの疑問を詳細な画像で明らかにしてくれ、追加の詳細な情報を与えてくれる非常に有用な機器です。たとえると、歯科用CTは複雑な根の中の「地図」を手に入れる事ができるツールなのです。
マイクロスコープ、歯科用CTを両方使って複雑な根の中を治療することで、今までわからなかった問題や見えなかった感染源に対してアプローチすることが可能となり、根管治療が「見える、わかる」治療になるのです。
ラバーダム防湿を用いた
根管治療
ラバーダム防湿とは
無菌的な環境で治療を行うのに必須のラバーダムは、根管治療を行う際に、洗浄・消毒を行った根管に唾液や細菌が新たに中に入らないようにするために使用する薄いゴムシートのようなものです。歯にゴムのシートをかけ、お口の中と治療する歯を隔離する治療法のことをいいます。
ラバーダムの重要性
ラバーダム防湿をして治療した場合とそうでない場合とを比べると、治療成績が10倍違うことがわかっています。
治療を行っても根管内に細菌が入り込んでしまいます。これでは治療をする意味がなくなってしまうため、当院ではラバーダムを使用し、根管内を無菌的環境にすることで、なるべく再治療にならないように根管治療を行っています。
ラバーダムは治療する歯を守るとともに、強い薬剤、器具などが患者さんのお口の中に流れたり、落ちたりすることがなくなり、安全面でも重要となります。
また当院では、根管治療以外にも様々な治療でラバーダムを使用します。