【60代女性】
重度の歯周病で抜歯と言われた【重度歯周病治療】

長年歯周病で悩まれ、
転院を繰り返した患者さん
の再生治療症例

この患者さんは、長く通っていた歯医者さんが閉院してしまい、しばらく歯の治療をそのままにしていました。半年ほど前、歯の痛みが出たため、近くの歯医者さんに行ったところ、左上の歯を抜く必要があると言われ、とても不安になったそうです。

そこで、インターネットで歯周病の専門医を探し、別の歯科医院へ行きました。その歯科医院で2本の歯を抜いた後、歯周基本治療を受けていましたが、今度は「前歯も抜いて、矯正治療やブリッジ、もしくはインプラントをした方が良い」と言われ、どの治療が自分に一番合っているのか分からなくなり、また不安を感じていたとのこと。

そこで、さらに詳しい診断と治療方針について相談するため、東京科学大学(旧東京医科歯科大学)の歯周病外来を受診されました。そこで当院をご紹介いただき、ご来院されたという経緯です。

患者さんは「これから先も、20年、30年とご自身の歯で食事をしたり、笑顔を見せたりできるような、長持ちする治療をしたい」という強いご希望をお持ちでした。
これまでの30年間でも、少しずつ歯を失ってきた経験があり、その原因は全て歯周病だったそうです。また、歯が痛むため、右側の歯だけで食事をしている状態でした。

当院で詳しく検査したところ、レントゲン写真で歯を支える骨(歯槽骨)が全体的に大きく減ってしまっていることが確認できました。特に奥歯や前歯の部分では、歯を支える骨が3分の2以上も失われていました。
すでに他の歯科医院で歯周基本治療を受けていたため、歯周ポケット(歯と歯ぐきの間の溝)はそこまで深くありませんでしたが、一部の歯では4ミリ以上の深いポケットが残っていました。また、複数の奥歯を失い、お口全体の噛み合わせが大きく崩れていました。特に重要な歯である『Keytooth』(噛み合わせの土台となる大切な歯)までも失っていました。

患者さんご自身も歯周病であることを自覚されていたため、「重度歯周炎(広汎型慢性歯周炎 ステージIV グレードB)」という診断を聞いても、特に驚きはなかったそうです。

歯周病は、歯周ポケット内で細菌が増え、さらに深く入りこむことで起こる感染症です。体の免疫力とのバランスの中で、進行と停止を繰り返しながら、数年〜10年単位という長い時間をかけて無症状のまま進行します。
このため、痛みなどの症状が出たときには、すでに手遅れに近い状態となっていることが少なくありません。症状が出る前にご自身で気づくことは極めて困難なため、歯科医院での定期的なチェックが不可欠なのです。

治療計画は、歯周基本治療、歯周外科治療、口腔機能回復治療の順に進めることが世界のガイドラインで定められています。
歯周病は1本の歯だけでなくお口全体に広がる病気のため、全ての歯を診る「全顎治療=包括的治療」が必須となります。日本でも成人の多くが歯周病に罹患していることから、当院では「多くの方が罹患している可能性」を前提に、まずお口全体の精密な検査から治療をスタートします。

  • 治療前

  • 治療後

【治療前】
この患者さんは、奥歯のほとんど(第二大臼歯)をすでに失っており、さらに「Keytooth」と呼ばれる、噛み合わせの土台となる大切な歯、左上の一番奥の歯(第一大臼歯)までも失っていました。そのため、お口全体の噛み合わせが大きく崩れてしまっている状態でした。

重度の歯周病が原因で、歯並びにも問題が出ていました。例えば、前歯が前に突き出ていたり(フレアアウト)、奥歯が前に傾いたり(近心傾斜)していました。残っている3本の奥歯(第一大臼歯)でも、歯の根元が分かれている部分(分岐部)が露出しており、歯ぐきが下がって、歯と歯の間の三角形の歯ぐき(歯間乳頭)も失われていることがわかります。これらは、歯を支える組織が広範囲にわたって失われている深刻な状態を示しています。

さらに、被せ物(クラウン)と歯ぐきの間に段差や隙間が見られます。このような「不適合なクラウン」は、細菌の塊であるプラークが溜まりやすく、歯周病をさらに進行させてしまう原因となることがあります。

【治療後】
長期間にわたる治療を経て、お口の中は大きく改善されました。

まず、歯周病の進行を止めるための「歯周基本治療」を徹底的に行いました。これには、歯の神経の治療(根管治療)で歯の内部の感染を取り除いたり、虫歯を削って詰め物や被せ物で歯の形を修復したりする処置が含まれます。また、最終的な被せ物が入るまでの間、歯ぐきの状態を整え、清潔に保てるように「治療用の仮歯(プロビジョナルクラウン)」を装着しました。

次に、歯周基本治療だけでは改善しきれなかった部分に対して、「歯周外科治療」を行いました。特に、失われた骨を再生させるために「歯周組織再生療法」を行い、歯周病で溶けてしまった骨の回復を促しました。

そして、お口全体の噛む機能と見た目を回復させる「口腔機能回復治療」に進みました。以前に失われていた奥歯(第二大臼歯)の部分には、骨に人工の歯の根を埋め込む「インプラント治療」を行い、しっかりと噛める新しい歯を再建しました。また、歯周病で乱れてしまった歯並びや噛み合わせを整える「歯周矯正治療」も行い、歯周病の再発を防ぎながら、お口全体のバランスを改善しました。

これらの治療を組み合わせることで、患者さんは再びご自身の歯でしっかりと噛むことができるようになり、笑顔にも自信を取り戻されました。今後は、この良い状態を長く保つために、定期的なメインテナンスを続けていきます。
  • 治療前

  • 治療後

【治療前】
お口の中の左側の状態を詳しく見ています。

写真を見ると、まず左上の奥歯が2本失われているのがお分かりいただけるかと思います。同様に、左下の奥歯も1本(第二大臼歯)失われていました。これらの歯を失ったことで、噛み合わせのバランスが崩れ、食事をする際にも不便を感じていたと推測されます。

特に、左上大臼歯を2本失った部分の歯ぐき(歯槽堤)が、大きくくぼんでいるのが確認できます。これは、歯周病によって歯を支える骨が大きく吸収された結果、歯ぐきが下がってしまったことを示しています。

また、左上の奥歯の手前にある小さな奥歯(第二小臼歯)には、形が合っていない古い被せ物(不適合なクラウン)が入っています。このような被せ物の隙間には、細菌の塊であるプラークが溜まりやすく、歯周病をさらに悪化させてしまう原因となります。

歯並びにも問題が見られます。重度の歯周病が原因で、奥歯が前に傾いたり(近心傾斜)、前歯が前に突き出てしまったり(フレアアウト)していました。これらの歯並びの乱れは、見た目の問題だけでなく、歯磨きを難しくし、歯周病をさらに進行させるリスクを高めてしまいます。

これらの写真から、左側のお口全体にわたって、歯周病の進行と、それに伴う歯の喪失や歯並びの乱れという深刻な問題が見て取れます。

【治療後】
長期間の治療を経て、お口の中の左側の状態が大きく改善された様子をご覧いただけます。

以前は左上の奥歯(大臼歯)を2本、左下の奥歯(第二大臼歯)を1本失っていましたが、その部分にはインプラントがしっかりと埋め込まれ、新しい歯が再建されています。写真を見ると、インプラントが安定して歯ぐきに馴染んでいるのがお分かりいただけるかと思います。

特に、以前は左上大臼歯を失った部分の歯ぐき(歯槽堤)がえぐれるようにくぼんでいましたが、治療によって歯を支える骨が回復し、それに伴い歯ぐきのラインもある程度回復しています。インプラントの周囲の歯ぐきが、以前よりも健康的で自然な状態に近づいているのが視覚的に確認できます。

また、左上の奥歯の手前にある小さな奥歯(第二小臼歯)には、以前の不適合な被せ物から、お口にぴったりと合い、見た目も機能も優れた精度の高い被せ物(クラウン)に交換されています。これにより、この歯の周りの歯ぐきの状態も改善され、プラークが溜まりにくい清潔な環境になりました。

重度の歯周病が原因で乱れてしまっていた歯並び(歯列不正)も、治療によって大きく改善されました。奥歯の傾き(近心傾斜)や前歯の突き出し(フレアアウト)が修正され、お口全体の噛み合わせのバランスが整い、見た目も自然な歯並びに戻っています。

これらの治療によって、左側のお口全体は失われた機能を回復し、歯周病の進行も止まり、安定した健康な状態を維持できるようになりました。写真からも、治療前とは比較にならないほど、歯ぐきと歯の状態が改善されているのが見て取れます。
  • 治療前

  • 治療後

【治療前】
このレントゲン写真では、複数の歯に問題が見られます。

まず、黄色い線で示した部分にご注目ください。これは、歯を支える骨の本来の高さと、現在の状態を示しています。この線の下では、奥歯(第二大臼歯)1本分に相当する大きな骨の欠損(骨が溶けている部分)が見られます。

さらに、その隣の奥歯(第一大臼歯)の遠い側の根の先(根尖付近)まで骨が吸収されており、歯の根の分かれ目(分岐部)を超えて骨が失われているのがわかります。また、この歯には、形が合っていない古い詰め物や被せ物(不適合な修復)があり、歯の根の先端には炎症による影(根尖病変)も確認できます。

手前の小さな奥歯(第二小臼歯)には、隙間や段差のある合っていない被せ物(不適合なクラウン)が入っており、これらが細菌の塊であるプラークを溜めやすく、歯周病を悪化させる原因となっていました。

【治療後】
右側の治療後レントゲン写真は、長期間の治療を終えた後の状態を示しています。治療前のレントゲン写真と比べて、お口の中が大きく改善されているのがお分かりいただけるかと思います。

特に、黄色い線で示した歯を支える骨のラインに注目してください。以前は大きく骨が失われていましたが、骨のレベルが大きく改善し、新しい骨がしっかりと再生しているのが確認できます。

以前、奥歯(第二大臼歯)1本分の骨が失われていた部分には、インプラントがしっかりと埋め込まれ、新しい歯が再建されています。また、隣の奥歯(第一大臼歯)では、遠い側の根の先まで及んでいた骨の吸収や、歯の根の分かれ目を超えて失われていた骨が、大きく改善し、分岐部付近まで骨が再生しているのがわかります。

さらに、以前は炎症の影が見られた第一大臼歯と、不適合な被せ物が入っていた小さな奥歯(第二小臼歯)は、それぞれ根の治療(根管治療)をやり直し、病変がなくなっています。これらの歯には、ぴったりと合った精度の高い被せ物(クラウン)が装着され、見た目も機能も大きく改善されました。
  • 治療前

  • 治療後

【治療前】
このレントゲン写真では、奥歯から手前の歯にかけて(第一大臼歯~犬歯)の状態を詳しく見ています。

まず、一番奥の第一大臼歯に注目してください。別のレントゲン写真でも説明しましたが、この歯の遠い側の下の根(遠心頬側根)の根の先近くまで骨が吸収されており、歯の根元が分かれている部分(分岐部)を超えた大きな骨の欠損が、この写真ではよりはっきりと確認できます。これは、歯周病が非常に進行していることを示しています。

さらに、その手前の第一小臼歯の近くの骨に、新たな問題が見つかりました。歯の根の長さの半分近くにまで及ぶ大きな骨の欠損(骨が溶けている部分)が確認できます。

この第一小臼歯自体にも問題があります。歯の根の先端には炎症による影(根尖病変)があり、さらに歯に合っていない古い被せ物(不適合なクラウン)が入っています。これらの問題が重なることで、歯周病をさらに悪化させる原因となっていました。

【治療後】
右側の治療後レントゲン写真は、治療を終えた後の、奥歯のインプラント部分から手前の歯にかけて(第二大臼歯相当部のインプラントの一部~犬歯、側切歯の一部)の状態を示しています。以前に見られた様々な問題が、大きく改善されているのがお分かりいただけるかと思います。

以前のレントゲン写真では、歯を支える骨が大きく失われていましたが、治療によって骨のレベルが改善し、新しい骨がしっかりと再生しているのが確認できます。特に、以前に第一小臼歯の近くに見られた、歯の根の長さの半分近くにまで及ぶ骨の欠損は、ほぼ元の健康な状態にまで骨が再生しました。

また、以前は炎症の影が見られたり、合わない被せ物が入っていたりした第一大臼歯や第一小臼歯、そして第二小臼歯は、それぞれ根の治療(根管治療)をやり直し、病変がきれいになくなっています。これらの歯には、お口にぴったりと合い、見た目も機能も優れた精度の高い被せ物(クラウン)が装着され、健康的な状態に戻りました。

奥歯の失われた部分には、第二大臼歯相当部にインプラントがしっかりと埋め込まれ、噛む機能を回復させています。

これらの治療によって、この部分のお口の状態は劇的に改善され、歯周病の進行も止まり、安定した健康な状態を維持できるようになりました。
  • 治療前

  • 治療後

【治療前】
このレントゲン写真では、左上の奥歯の状態を示しています。

黄色い線は、歯を支える骨のラインを示しています。以前は奥歯(大臼歯)を2本失っており、右側でご覧いただいたレントゲン写真と同様に、歯2本分に相当する大きな骨の吸収(骨が溶けている部分)が確認できます。これは、歯周病が非常に進行していたことを示しています。

さらに、その手前の小さな奥歯(第二小臼歯)にも問題が見られます。この歯の奥の方(遠心)には骨が大きく失われている部分(骨欠損)があり、歯の根の先端には炎症による影(根尖病変)も確認できます。また、歯にぴったりと合っていない古い被せ物(不適合なクラウン)が入っており、これらが細菌の塊であるプラークを溜めやすく、歯周病を悪化させる原因となっていました。

【治療後】
左上の治療後レントゲン写真は、長期間の治療を経て、左上の奥歯の状態が大きく改善された様子を示しています。

以前は奥歯(大臼歯)を2本失い、骨も大きく吸収されていましたが、その部分にはインプラントが2本しっかりと埋め込まれ、新しい歯が再建されています。

特に注目していただきたいのは、歯を支える骨のラインです。以前は、歯周病の影響で骨が大きく溶け、凹凸のある不規則な形をしていましたが、治療によって第二小臼歯の奥(遠心)の骨欠損も改善され、骨のラインが全体的に整い、なめらかになっています。これは、歯によってデコボコしていた骨の高さが平坦になり、連続性のある健康的な状態に戻ったことを示しています。

また、以前、骨の先端に炎症の影(根尖病変)が見られ、合わない被せ物が入っていた第二小臼歯は、根の治療(根管治療)をやり直し、病変がきれいになくなっています。この歯には、精度の高い被せ物(クラウン)がぴったりと装着されました。その手前の第一小臼歯には、精密な詰め物(インレー)が施されています。

これらの治療により、左上の奥歯は失われた機能を回復し、歯周病も安定して、見た目も機能も大きく改善されました。


歯周病の治療ステップ

歯周基本治療とは

これは単に歯石を取るという作業ではなく、お口全体の健康を再構築し、長期的に安定させるための、いわば『口腔内のリハビリテーション』です。この治療で中心的な役割を担うのが、歯科衛生士です。

1. 治療のパラダイムシフト:
対症療法から原因療法へ

  • 従来の虫歯治療:
    「構造物の部分的な修復工事」

    歯を削って詰める治療は、例えるなら建物の壊れた部分を修繕する「修復工事」です。もちろん重要な治療ですが、対処的なアプローチと言えます。
  • 歯周基本治療:
    「建築を支えるための地盤改良と環境設計」

    一方、歯周基本治療は、建物(歯)が建つ『地盤(歯周組織)』そのものを健全な状態に改善し、そもそも問題が起きにくい環境を『設計』し直す、より根本的なアプローチです。この地盤が脆弱では、どんなに立派な建物(被せ物)を建てても長持ちしません。全ての歯科治療の成否は、この基礎工事にかかっているのです。

2. 歯周基本治療の具体的なステップ

このプログラムは、大きく2つのフェーズで進行します。

フェーズ1:感染源の徹底的な除去(原因除去)

歯周病の根本原因は、細菌の塊であるプラーク(歯垢)です。このプラークが石灰化したものが歯石です。つまり歯石は「日々の磨き残しの証拠」と言えます。このフェーズでは、患者さんと歯科衛生士がパートナーとなり、徹底的に感染源を除去します。

  • 歯肉より上
    (ご自身のセルフプラークコントロール)

    日々のプラークコントロールは患者さんご自身の役割です。お一人おひとりに合った最適な清掃方法を習得できるよう、プロとしてサポートします。
  • 歯肉より下
    (歯科衛生士のプロフェッショナルケア)

    歯周ポケットの奥深く、歯根に付着した感染物質(バイオフィルムや歯石)は、ご自身では決して除去できません。これを専門的な器具で精密に除去するのが歯科衛生士の役割です。これは単なる「歯石取り」ではなく、歯周組織が本来持つ治癒能力を最大限に引き出すための専門的な処置です。
フェーズ2:プラークコントロールしやすい
口腔環境への再構築

感染源を除去しても、汚れが溜まりやすい環境が残っていては再発は免れません。このフェーズでは、主に歯科医師が専門的な技術で、より清掃しやすい口腔環境を創り出します。

  • 不適合なクラウンの修正
    段差や隙間のある古い被せ物は、細菌の温床です。これを一度取り外し、清掃しやすく、かつ最終的な理想形を見据えた『プロビッショナルクラウン(治療用の仮歯)』に置き換えます。これは、歯ぐきが健康に治癒するための”ギプス”の役割も果たします。
  • 戦略的な抜歯と治療用義歯
    残念ながら、重度の歯周病で保存不可能と判断される歯は、周囲の歯への悪影響を防ぐために計画的に抜歯を選択することがあります。抜歯後の審美性や噛み合わせを暫定的に回復させる『治療用義歯』は、最終的な治療に進むための重要なリハビリの一環です。

3. 成功への鍵:プロケアと
『セルフコントロール』の実践

歯周病治療の成功、そして長期的な健康維持に最も重要なのが、患者さんご自身による日々の『セルフコントロール』です。これは、単にお口の清掃だけを指す言葉ではありません。良質な睡眠、栄養バランスの取れた食生活、適度な運動といった、身体の免疫力を高める生活習慣全般を指します。歯ぎしりや食いしばりのように、ストレスが誘因となって歯周組織にダメージを与える要因も存在するため、生活全体の質を高める視点が不可欠です。

そして、このセルフコントロールの中でも、最も直接的かつ重要な核となるのが『セルフプラークコントロール』です。これは、毎日の歯ブラシや補助器具を正しく使い、歯周病の根本原因であるプラークをご自身で徹底的に除去する技術のことです。

歯科衛生士は、専門的な技術で口腔内を改善に導くと同時に、患者さん一人ひとりに最適なセルフコントロールのプランを立案し、その実践を支える『メディカルコーチ』としての役割を担います。

歯周外科治療とは

精密な検査の結果、基本治療だけでは改善しきれない深い歯周ポケットが残ることがあります。これは、いわば地盤の奥深くに残る、通常の機材ではアプローチできない『硬化した汚染土壌』のようなものです。このままでは、どんなに素晴らしい建物を建てても、基礎の安定性が将来的に揺らいでしまうリスクが残ります。

この根深い問題を解決するため、この分野の専門家である『歯周病認定医』による、より高度な『歯周外科治療』という選択肢をご提案します。

1. なぜ外科的なアプローチが
必要なのか?:「不可視」から「可視」へ

歯周基本治療は、見えない内部を探りながら汚れを除去する「非直視下」の処置でした。例えるなら、地表からドリルを入れて地中の汚染を探すようなものです。

歯周外科治療は、麻酔下で歯ぐきを一時的に開くことで、歯の根や骨の状態を「目で直接見て確認(直視下)」できるようにします。これにより、汚染源の徹底的な除去が可能となり、治療の精度が飛躍的に向上します。

2. 歯周外科治療の目的と種類

目的別に、大きく3つのアプローチがあります。

  1. フラップ手術(歯肉剥離掻爬術):
    『地盤の精密掘削・清掃工事』

    最も代表的な外科治療です。歯ぐきを開いて歯根にこびり付いた感染源を徹底的に除去し、歯周病で凸凹になった骨の形を清掃しやすいように整えます。地盤を掘り起こし、汚染物質を根こそぎ取り除いて、きれいに整地し直すイメージです。
  2. 歯周組織再生療法:
    『地盤の再造成工事』

    条件が整えば、歯周病で失われた骨(地盤)を再生させることが可能です。骨が失われた部分に特殊な膜や薬剤(エムドゲイン®︎など)を適用し、骨を作る細胞を呼び込み、組織の再生を促します。えぐれてしまった地面に、新しい土を造成する高度な特殊工事です。
  3. 歯周形成外科(歯肉切除術など):
    『周辺環境の景観・機能整備』

    歯ぐきのラインが不揃いな場合や、厚ぼったく清掃しにくい場合に、その形を整える手術です。見た目を美しく改善するだけでなく、清掃しやすい環境を作ることで、再発予防に繋げます。建物の周りの景観を整え、メンテナンスしやすいようにデザインし直す工事です。

最終章:口腔機能回復治療とは

長期間にわたる歯周治療、いわゆる『地盤改良工事』により、お口の中は、これから新しい建物を建ててもびくともしない、最高の状態に整いました。
いよいよ、このプロジェクトは最終章へと入ります。それは、この健全な地盤の上に、失われていた機能と美しさを取り戻す『口腔機能回復治療』という、いわば“街全体の再開発プロジェクト”です

1. プロジェクトの目的:
単なる「修復」から「街の再建」へ

これからの治療は、単に歯の無い部分を補う「修復」ではありません。お口という名の“街”が、本来持っていた素晴らしい機能と景観を取り戻し、再び活気にあふれるための『総合的な再開発』です。当院が目指す“街の機能”とは以下の3つです。

  • 食べる(咀嚼機能)
    街のエネルギーを生み出す、効率的で力強い物流システム。
  • 話す・笑う(発音・審美機能)
    街の景観を彩り、人々の豊かなコミュニケーションを育む文化施設。
  • 噛み合わせ(全体の調和)
    全ての建物のバランスを保ち、街全体の交通網をスムーズにするインフラ。

2. “街”を再建するための、
多彩な建築技術

この再開発を成功させるため、各分野の専門家(建築家チーム)を結集し、最新・最適な建築技術を駆使します。

  • 補綴治療(クラウン・ブリッジ):
    『既存建築のリノベーションと連結』

    傷んだ建物を美しく機能的な資材で改修したり(クラウン)、隣の建物を支えに新たな空間を架け渡す(ブリッジ)技術です。
  • 義歯治療(入れ歯):『高機能なユニット建築』
    広範囲に建物が失われた区画に、取り外し可能なユニットを設計・設置し、街の機能を回復させます。精密な設計と定期的なメンテナンスが鍵です。
  • 矯正治療:『都市計画・区画整理』
    建物の配置自体が乱れている場合、まず街全体のレイアウトを見直す『区画整理』を行います。歯並びを整えることで、交通網(噛み合わせ)と景観(見た目)を劇的に改善します。
  • インプラント治療:『最新技術による新築工事』
    更地になった場所に、独立した頑丈な基礎(インプラント)を地盤に直接打ち込み、新しい建物をゼロから新築する最先端の技術です。周囲の建物に負担をかけず、元からあったかのような機能と見た目を回復できます。

まとめ:マスタープランに基づき、
最高の未来を創造する

これらの多彩な建築技術をどう組み合わせ、どの順番で進めるか。それを示したものが、患者さん一人ひとりのための『マスタープラン(総合治療計画)』です。

この壮大なプロジェクトは、各分野の専門家(認定医、矯正医、口腔外科医、歯科技工士)、日々のメンテナンスを支える歯科衛生士、そして何よりもプロジェクトの主役である患者さんご自身とのチームワークによって成り立ちます。

治療には時間がかかるかもしれません。しかしそれは、10年後、20年後の患者さんの人生が、より健康で、より豊かになるための、最高の自己投資です。

当院と一緒に、最高の“街”を再建する旅を始めましょう。

担当医関西 一史先生
主訴重度の歯周病で抜歯と言われ不安になり、旧東京医科歯科大学(現東京科学大学)歯学部付属病院歯周病外来へ行き、当院を紹介された
期間4年(メインテナンス予防3年目)
費用総額4,873,000円
治療内容全顎治療:歯周病治療、歯周組織再生療法、インプラント治療、GBR、矯正治療、ダイレクトボンディング、セラミック治療
治療に伴うリスク・歯周病治療の効果を発揮するのは、口腔衛生環境の維持にかかっているため、正しいケアと歯科医院でのメインテナンス予防が必要です。
・くいしばりや歯ぎしりがある場合、負担がかかりやすくなり、割れや欠けが発生する可能性があります。

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